永住権への”ドラクエ攻略”:三日の遅れが招いた二ヶ月の空白 -移住記Ⅲ-
IELTS 6.0を突破し、永住権への「ダーマの神殿(専門学校)」に挑んだ37歳の元看護師。しかし、運命の悪戯とビザの遅れにより、初日の教室で非情な退場宣告を下される。たった3日のズレが招いた、2ヶ月の「空白の生活」。不条理な移住のリアルをドラクエ風に紐解く、怒涛の専門学校編・上巻。
Mieko - NZ現役看護師
3/17/2026


目次
1.最強の通行手形「永住権」の正体
2.布の服、ひのきの棒で魔王に挑むな
3.ダーマの神殿:ビジネス科へ転職
4.レベル上げの果て:IELTS 6.0突破
5.神の足止め:閉ざされた神殿の門
6.二ヶ月の空白:貯金が減る足音
前回の記事、移住記Ⅱでは語学学校での迷走ぶりをお話ししましたが、
今回から専門学校編へと入っていきます。
語学学校に行ったのはそもそも専門学校に行くため。
そして専門学校に行くためには、入学英語要件としてIELTS 6.0というスコアを突破しないといけないんですが…
今回の記事では、語学学校から専門学校へのステップアップの様子について、お送りいたします。
この複雑怪奇な移民の物語を、国民的RPG「ドラゴンクエスト」になぞらえて紐解いてみましょう。
1. 最強の通行手形「永住権」の正体
そもそも何で専門学校に行かないといけないの?って話ですよね。
これは多くの移民が目指す最終目標である、「永住権」から逆算していくとわかります。
永住権とは一言で言えば「この国に一生居ていいよ、NZ国民とほぼ同じ権利をあげるよ」
…という最強の通行手形です。
私も息子も観光や留学でニュージーランドに来たわけではなかったので、当然永住権を目指していました。
永住権にもいろいろなカテゴリがあり、移民の大部分が目指すのが「技能移民」という部門での永住権。
(要するに:国が「君のスキルはうちの国に役立つから、ずっと居ていいよ」と言ってくれる枠)
この枠の永住権を取得するためには、当時のルールでは「フルタイムで雇用され、働く」ことが、
技能移民としてのランクポイント的なものを稼ぐために非常に重要でした。
※注意:NZの移民ルールはしょっちゅう変わりますので、さらに知りたい方は最新情報を参照してくださいね
ニュージーランドで働く=しっかり税金を納める=国に貢献する、という図式が成り立ち、
そういう人材を技能移民と呼び、彼らに永住権が下りやすいのは道理に叶ってますよね。
(もちろん他にも諸条件はあります)
しかし外国人である移民が、簡単にニュージーランドで働けるわけではありません。
働くためには必ず「外国人だけどNZで働いていいよ」という、就労許可付きのビザが必要なんです。
この就労許可がない状態で働くことは法に触れ、強制国外退去にすら問われます。
そこでどのようにフルタイムの就労許可、つまりワークビザを取るかということが
永住権に向けての最初のステップとなるわけです。
(一部の学生ビザでも就労許可は下りますが、パートタイムの仕事しかできません)
2. 布の服,ひのきの棒で魔王に挑むな
移住を考える上で、絶対避けては通れないワークビザの壁。
これをRPGの金字塔「ドラゴンクエスト」で例えるなら、
永住権は「伝説の装備」を全て揃えて王様に認められた状態。
でも、いきなり魔王(就職戦場)に挑もうとしても、
今の私は、布の服とひのきの棒(つまり英語へなちょこ)しか持っていない。
英語ペラペラの強者は、いきなり「はぐれメタルの剣」を持ってショートカットできるかもしれませんが、
私のようなレベル1の冒険者はそうはいかない。
そこで「専門学校」という名の「ダーマの神殿」に一旦入り、時に望まぬジョブチェンジ(転職)することで、
卒業時に「オープンワークビザ」という名の「鉄の盾」を手に入れる…。
そう、まずは死なないための装備(ビザ)を整えること。
それが、私の選んだサバイバル攻略法だったんです。
普通に考えても、私みたいな英語へなちょこレベル1冒険者をいきなり雇う雇用主はいるわけがない。
そんな私のような立場の弱い移民がどうするかというと、
それが専門学校に行き、英語力とその国の学歴を付けること。
かつ、
行く学校によっては卒業すれば、卒業後に一定期間ではあるけれど、
どの雇用主の元で働いてもいいよ、という卒後オープンワークビザ(Post Study Open Work Visa)が取れるという奇策!
このビザがあれば就職活動の際に、雇用主にワークビザをサポートしてもらわなくても、
「この国で働けるビザ持ってるから、お試しで私を雇ってみない?」
という有利なカードを切ることができるわけです。
私が目指していた専門学校も、まさにその卒後オープンワークビザが出る学校。
だから専門学校を目指していた、ということです!(ゼェゼェ...やっと専門学校に戻ってきた)
3. ダーマの神殿:ビジネス科へ転職
さて、私が具体的にどの「ジョブ」への転職を選んだか。
エージェントに紹介されたのが
NZIEという学校の、応用ビジネス科のヘルスケアマネジメント専攻1年のコースでした。
はい、看護でも介護でもなく、
何とビジネスの学校!
(ヘルスケアマネジメントなので一応医療福祉のバックグラウンドある人が対象でした)
社会人なってこの方、看護師しかしたことない私に、
なんで看護や介護じゃないの?と思われると思いますが、ちゃんと理由があります。
①看護のコース
・大学はIELTS6.5で入れるけど、3年も行かないといけない。学費的に無理。
・大学院はIELTS7.0で、英語力が高すぎて無理ゲー。
②介護のコース
・専門学校はIELTS5.5や6.0で入れるけど、卒後オープンワークビザを取るには2年行かないといけない。
・しかも私の移住当時は平の介護士で永住権を取れる道がなかった(2026年現在の今はあります)
…という八方塞がり状況で、私の中の優先順位は「永住権>キャリア」だったため、
ヘルスケアマネジメントという、なんちゃってビジネスコース1年が、
私の語学力、資金、将来のビザの三条件を考慮すると、一番目的に合ったコースだったんです。
話がとても長くなりましたが、看護師の道は「自分には無理だ」と封印して選んだこの選択。
看護師のプライド?
そんなものは、オークランド空港に降り立った瞬間に南太平洋の風に飛ばされました。
それが、泥舟か、黄金の船かもわからぬまま、私はその藁を握りしめる。
こうして、37歳の元看護師は、「未知の航路」へ向かって、震える足で一歩を踏み出したのです。
4. レベル上げの果て:IELTS 6.0突破
入国時点で語学学校は6カ月間申し込んでおり、専門学校に入るためには
何としてもこの間にIELTS6.0を取らねばならない、背水の陣。
私の語学学校は、生徒が好きな時にいつでもIELTSを受けていいわけじゃなく、
IELTS形式の校内テストで、目標とするIELTSスコア相当の点数を取ってからでないと、
実際のIELTSを受けに行っちゃダメ、というシステムでした。
その校内テストも毎週水曜日、校長のところでしか受けられない制約もあったりして、
語学学校4カ月目に入ったあたりから、私は毎週毎週校長のところに通いつめました。
昼間のクラスと夜のオンライン英会話とで、一生懸命勉強してたつもりで、
もちろん一発合格♪…なんてそんなうまい話があるはずもなく…。
正確には覚えてませんが、6~7回は通ったと思います。
こんなに毎週来るのは私くらいで、校長に「あら、また来たの?」と顔パスになるまでに(笑)
粘った甲斐あり、なんとか校内テストを突破し、さらに本番のIELTSも目標スコアを奪取!
レベル1からの泥臭いレベル上げを経て、ようやくレベルアップのファンファーレが鳴り響いた瞬間でした。
これでダーマ神殿(専門学校)の門を潜り、新たな職業を得て、
いよいよ魔王(就職や移住)との本戦が始まる。
はず、でした。……。
そう、私はまだ知らなかったのです。
神殿の入り口で、移民局という名の理不尽な門番が、私の背後でそっと鍵を閉めていたことに。
5. 神の足止め:閉ざされた神殿の門
当初申し込んでいた6カ月の期限内で、見事にIELTS 6.0を突破。
しかも、運の良いことに語学学校のプロモーションで「6週間の無料延長」が付いてきました。
当時の私は「ラッキー! 6月までじっくり英語を磨いてから、余裕を持って専門学校へ行こう」と、
そのおまけ期間を無邪気に喜んでいました。
そして2017年6月に語学学校を卒業し、9月から専門学校に入ることになりました。
しかし盤石だと思っていた私の計画に、細い亀裂が走ったのは、その直後のことでした。
専門学校が始まろうというのに、次の学生ビザがなぜか下りない…。
NZ移民局の事務処理の遅さは、実はこの時が初めてではありませんでした。
2016年に入国する際の、最初の学生ビザも遅れて発行され、渡航が1カ月後ろ倒しになってたんですね。
だから今回もまたかと思い、でも不備なく申請はしていたから、出るだろうと思っていたんです。
でも専門学校初日のオリエンテーションの日になってもまだビザ来ないまま出席していたら、
信じられないことが起きたんです。
オリエンテーション当日、その静粛を突然破って、教室にバタバタと入ってくる事務員。
そして向かって来たのはなんと私の目の前。
「Miekoよね?ねぇ、ちょっとあなた。もう学生ビザは出たの?」と唐突に聞いてきました。
「え、あ...まだです」
とりあえず正直に答えました。
すると返ってきたのは、まさかの答え。
「残念ながらビザが出ていなければ、このコースに参加することはできないの。
とりあえず教室から出れるかしら?」
...何という冷酷な宣告。
ドラマのようなシーンに面喰らいながらも、荷物をまとめて教室から出ざるを得ない私。
クラスメイトたちの視線が痛いほど突き刺さる。
その事務員は「決まりだから仕方がない、ビザが出たらまた連絡して」と軽く言い放ち、
あっさり立ち去りました。
あまりの突然のことに何が起こったかわからず、真っ白な私の視界。
結局私は成すすべもなく、すごすごと家に帰るしかありませんでした。
そして当のビザが出たのはなんと、そのたったの3日後!
しかしオリエンテーションも含めてコース自体はもう始まってしまっていたため、
私は9月開始クラスからははじき出され、次の12月開始のクラスに回されることになりました。
たったの3日。
そのわずかな時間によって、私の人生という時計は無慈悲に強制停止されられることに。
何してくれてんのよイミグレ!(移民局の略称)とブチ切れたくても、時計は巻き戻らない虚しさ…。
せっかく手に入れた「ダーマの神殿」への入場券。
しかし、神殿の門番(移民局)によって閉ざされた神殿への門。
門を叩くことすら許されず、私は装備を解かれ、荒野へと追い返されたのです。
6. 二ヶ月の空白:貯金が減る足音
不可抗力で訪れた2カ月の空白。
次のコースが始まる12月まで、学校にも行けず、もちろん働くことも許されない。
いぇーい、人生の夏休みだぁ~!…とは全くなりませんでした。
むしろその真逆。うつうつとした引きこもり生活でした。
それもそのはず、社会人生活ずっと看護師として走ってきた私は、
産休育休以外では1週間が最大の休暇記録。
お金がたっぷりあれば楽しめる余裕もあったやもしれませんが、
NZ入国以来、一銭も稼がず、貯金に依存し、ただただ消費する毎日。
減っていくだけの銀行残高を眺めては、ため息と焦りを感じずにはいられない。
学生生活は最小限にして、一刻も早く仕事に就きたくて仕方なかったのに、全く裏腹な現実。
息子は学校へ行き、街の人は忙しそうに歩いている。
自分だけが、時が止まった部屋で取り残されている。
移住は正解だったのか? という、毒のような疑念までぐるぐる回る始末。
要するに異国で母一人子一人で、プータロー生活楽しめるほどの度胸も、
先の見えない不安を笑い飛ばせる余裕も、当時の私にはなかったんですよね。
ただ、減っていく預金残高と、静まり返った部屋の空気だけが、私の現在地を教えてくれる。
私はただ、灰色の空を眺めながら、十二月に開くはずの「神殿の門」を待つことしかできませんでした。
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【追伸:今、ビザの壁や、出口の見えない「空白」の渦中にいるあなたへ】
世界で自分だけが取り残されたような焦燥の中にいても、どうか腐らないでください。
自分の努力ではどうにもならない「理不尽な足止め」は、残念ながらこの国ではよくある洗礼です。
今のあなたの孤独も、いつか必ず「誰かを救う武器」や「笑い話」に変わる日が来ます。
共にこの不条理なゲームを生き抜き、再び一歩を踏み出す時を待ちましょう。
そんな頑張るあなたを応援しています。
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さて、「専門学校編、始まります!」と威勢よく言ったものの、
この【上巻】で私が学校にいたのは、オリエンテーションのわずか数時間だけ…。
学校に行った時間よりも、移民局を呪っていた時間の方が遥かに長いという、
嘘のようだけど本当の記録です(笑)。
──そして、ようやくその門が開いた時。
私の前に現れたのは、温かな救済ではなく、さらなる「異界」の洗礼でした。移住記Ⅳに続きます…
続きを読みたいわ~という方がいらっしゃいましたら、
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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